研究概要 |
未熟心筋に対する外科的虚血再灌流時Carnitine投与の有用性に関する実験的検討 目的:脂肪酸代謝経路の酵素活性が低い未熟心筋に対し、さらに低値となる虚血再灌流時にCarnitineを投与することで、ミトコンドリアβ酸化促進による心機能回復が得られるか否か実験的に検討した。 方法:新生家兎摘出心Langendorf灌流モデル(希釈血液灌流、180分間冷却心停止)を用い、左室機能(DP:developed pressure,maxdP/dt,max-dP/dt,V10)、酸素消費量、冠血流量を再灌流後15分、30分で測定し、虚血前後での回復率(%)を算出した。通常の再灌流のコントロール群(N=8)とCarnitineを1mg/ml添加したCarnitine群(N=8)で比較検討した。 結果:左室機能はDP,maxdP/dt,max-dP/dt,V10のどの指標でもCarnitine群のほうが有意にコントロール群よりも良好な回復を示した。また冠血流量、酸素消費量でも同様の結果であった。 考案・結論:Carnitine投与により、左室収縮能、拡張能および冠血流量と好気的代謝の増大を示す酸素消費量の有意な改善を認め、その有用性が示唆された。 尚、本研究の要旨は第49回日本胸部外科学会総会(京都)にて発表した。現在、日本胸部外科学会雑誌に投稿する予定で準備中である。 本研究はすべて東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所研究部において行われたものであり、現在までにすでに設置されている設備(Langendorf装置1組、Catheter-tip transducer、心室内圧測定装置、圧微分回路、血液ガス分析装置)を利用し、実験用家兎も当研究所より提供されたので、今回の助成金はすべて摘出心を回路に装着する際、及びCatheter-tip transducerを左室内に誘導固定する際必要となる縫合結紮糸の購入費用に充てられた。
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