研究概要 |
我々は、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHRP)およびそのレセプターに対する一連の分子細胞生物学的検索を行い、平成8年度中に関連論文で国際雑誌に約10編を報告するとともに、国際および国内学会において活発に活動している。従来我々は腫瘍関連タンパクとして発見されたPTHRPが、正常組織の発生に重要な役割を果たすタンパクであることを明らかにし、特に軟骨や骨組織の形態形成および細胞の分化増殖におよぼす作用を分子細胞生物学的に検索してきた。前年度の主だった研究を挙げると、遺伝子組み替えにより、PTHRPの相同遺伝子を一部削除したHeterozygousミュータントマウスを検索し、個体成長に伴いその異常が蓄積し著明になること、さらにPTHRPやレセプターの局在や遺伝子発現を明らかにしている(Amizuka et al.Deve.Biol.)。またPTHRP欠損Homozygousマウスでは軟骨の発達が著しく阻害されるばかりでなく、軟骨細胞のアポトーシス(細胞死)が促進され、軟骨から骨への置換部位で軟骨内骨化が抑制されていることを報告している(Amizuka et al.,Endocrinology)。PTHRPに対するレセプターであるPTH/PTHRPレセプターでについても検索しており、軟骨細胞と骨芽細胞および腎臓の細胞を用いて、PTH/PTHRPレセプターの遺伝子発現における上流と下流のプロモーターの機能についてin situ hybridizationを用いて解明している(Amizuka et al.,Endocrinology)。また、PTHRPは本来、腫瘍にて発見されたことから、腫瘍細胞におけるPTHRPが細胞増殖にも関与するとともに、細胞内プロセッシングにも関与していることを明らかにしている(Bin et al,Int.J.Cancer,Sidler et al.,J.Clin.Endcorinol.Metab.)。
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