研究概要 |
歯原性上皮における細胞分化と機能の発現様式について詳細に検索するため,正常歯胚の内エナメル上皮細胞および各種歯原性腫瘍の腫瘍細胞について,ヒトアメロジェニンに対する RNA probe を用いた in situ hybridization 法によりエナメル基質蛋白の遺伝子発現および,抗アメロジェニン抗体を用い,エナメル基質蛋白の局在とその消長について検索した。その結果から以下のことが示された。 ラット切歯歯胚においては,舌側部の上皮細胞にはアメロジェニン mRNA のシグナルは観察されず,唇側部の内エナメル上皮細胞がその高さを増し,前象牙質の形成が開始されると共に同部位の内エナメル上皮にアメロジェニンm-RNAのシグナルが認められ、エナメル基質の形成に伴い,シグナルの増強が観察された。 エナメル上皮腫では,免疫組織化学的には,アメロジェニン蛋白は,10例中2例の一部の部位で弱陽性所見が認められたのみであったが,アメロジェニン遺伝子の発現は,10症例中すべてに認められた。また,組織型によりアメロジェニン遺伝子の発現部位に違いがあった。 腺様歯原性腫瘍においては,免疫組織学的に,遺伝子発現のみが認められた部位,アメロジェニン蛋白遺伝子の発現が共に認めれられた部位,アメロジェニン蛋白のみが認められ遺伝子の発現が認められない部位が観察された。本結果は,腺様歯原性腫瘍が,アメロジェニン遺伝子の発現,蛋白の産生を行う細胞からもはやそれらをなし得ない退縮エナメル上皮様の細胞まで,多様な機能を持った細胞によって構成されている事を示していると考えられる。
|