研究概要 |
歯肉線維芽細胞からの菌体表層成分によるHGFの産生 当教室で分離培養した歯肉線維芽細胞が肝細胞増殖因子(HGF)を産生する事と見い出し、このHGFの産生は炎症性サイトカイン、IL-1TNFによって増強されることを報告した(J.Biol.Chem.268,8140-8145,1993)。さらにHGF誘導物質を探索する過程で、グラム陽性菌の表層構成成分であるリポタイコ酸(LTA)が、歯肉線維芽細胞に作用してHGFを誘導することを見い出した。LTAは、非常に協力な免疫活性賦活剤であるグラム陰性菌のリポポリサッカライド(LPS)に匹敵するグラム陽性菌の構成分子であると考えられている。しかしLTAの免疫学的生物活性はLPSに比較すると非常に弱く、今までに報告されてきたLTAの生物活性はLTA標品へのLPSの混入による活性ではないかと言う懸念があった。LPSには歯肉線維芽細胞からのHGF誘導活性が高濃度おいてもさえ認められず、HGF誘導はLTA本来が有する活性であることが明らかになり、今年度報告した(Infect.Immun.64,1426-1431,1996)。 さらに当教室では、歯周病の原因菌といわれるPorphyromonas gingivalisの繊毛蛋白質およびその合成ペプチドが歯肉線維芽細胞に作用してHGFを誘導することも見い出した。現在大阪大学歯学部の小川先生の協力を得て、繊毛蛋白質の吸着活性、凝固活性など種々の生物活性を示すペプチドを供試してHGF誘導活性を示す部位の確立を実施している。 今後グラム陽性、陰性各種の菌体成分によるHGF誘導活性をスクリーニングし、口腔内病巣部における菌体成分とHGFとの関わりを追及していきたいと考えている。
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