研究概要 |
ごく最近、一酸化窒素(Nitric oxide,NO)が破骨細胞の重要な調節因子として作用することが明らかにされた。同因子は当初、気管支拡張因子(内皮由来弛緩因子EDRF)として同定されたが、その後、神経伝達の調節や細菌感染におけるマクロファージの活性化、抗腫瘍活性に関与するなど広範な生物活性を有することが明らかにされている。また、生体内ではマクロファージが主要な産生細胞である。そこで私は成熟破骨細胞分化誘導活性測定系において、P.gingivalis線毛による破骨細胞の分化にNOが関与するか否かを検討したところ、本線毛刺激により有意にNO産生が上昇し、このNOにより破骨細胞の分化が促進される事の知見を得た。さらにここに、近年、抗炎症生サイトカインとして注目されているInterleukin-4を添加し、骨吸収活性に与える影響を検討した。私自身、IL-4がマクロファージにおける機能発現を制御する因子として働くことを明らかにしており(H.Kikuchi et.al.Biochem.Biophys.Res.Commun.203,562-569,1994)、また、破骨細胞前駆細胞はモノサイト、マクロファージ系の前駆細胞より分化するものと考えられている。従い、IL-4が同実験系におけるNO産生をコントロールする可能性が考えられた。その結果、P.gingivalis線毛処理後24時間で誘導されたNOは、IL-4処理により濃度依存的に抑制された。さらに、IL-4は線毛刺激により誘導された、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)遺伝子発現及びTNF-α遺伝子発現をも抑制した。また、この抑制効果はIL-4前処理によって、より顕著であった。これらの現象はIL-4がP.gingivalis線毛により誘導されるサイトカイン産生を抑制することにより、本実験系におけるNO産生を制御することを示唆するものである。
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