研究概要 |
本研究は形態学的手法と生化学的手法を併用して,筋の発生、分化期における舌筋の筋構造タンパク質の変化と筋線維タイプの分類と分布,局在性の変化を解析し,特異的な舌筋の発生、機能分化の過程を明らかにしようとするものである.胎生期および新生児期のラットの舌筋を用いて一般的な組織学的手法を用いた組織切片の観察,電気泳動法を用いたミオシンのアイソフォームの生化学的解析,酵素組織化学的手法によるミオシン-ATPase,SDH,α-GPDHをもちいた筋線維タイプの解析を行った. 一般的な組織学的手法を用いた検索では舌筋は胎生期の比較的早い段階から発生することが認められた.また電気泳動法を用いたミオシンのアイソフォームの泳動パターンの解析では,生後14日の段階でも他の骨格筋(体肢筋,体幹筋)に比較して,胎児型のミオシンが高い比率で存在していること認められた.酵素組織化学的手法を用いた筋線維タイプの解析においては筋線維のタイプ分化は初期の段階,すなわち胎生期では認められず,新生児期においてその分化が認められた.また筋線維タイプの分類については哺乳類の他の骨格筋(体肢筋,体幹筋)に用いられている分類に必ずしも当てはまらない筋線維の存在が示唆された. 以上のことから,舌筋の発生段階,機能分化過程が他の骨格筋と異なる可能性が示唆され,それらは筋の機能を決定する重要な要素であることが推測される.
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