研究概要 |
顎関節を構成する下顎頭の軟骨内骨化過程における軟骨吸収と血管新生との関係を微小循環の見地から明確にする一環として、成長期(3〜5週齢)ラットの下顎頭を用い、関節軟骨石灰化層に侵入する血管およびその周囲基質に注目し、1.免疫組織化学法による血管内皮細胞の増殖活性,2.微細構造,3.トレーサーを用いた血管透過性の観察,等について光顕、走査電顕、透過電顕を併用して検索した。 【結果】1.血管内皮細胞の増殖活性の観察:トリチウム・チミジンのアナログであるBrdU(5-Bromo-2'-Deoxy-Uridine)を投与して2時間後のラット下顎頭の抗BrdU抗体を用いた免疫染色では、骨髄深層に位置する血管と比べ、特に、石灰化層直下の毛細血管の内皮細胞に多くの陽性反応が認められた。2.微細構造の観察:血管鋳型標本および凍結割断標本の観察では、石灰化層へ侵入する血管は、石灰化層下方に存在する毛細血管網から派生した血管であり、そのような血管が、まだ軟骨吸収により崩壊されていない石灰化層の軟骨小腔壁を貫通して小腔内に侵入する所見が多数みられた。3.血管透過性および透過性亢進部位の観察:硝酸ランタンを潅流した試料の超薄切片の観察では、石灰化層へ侵入する血管の管腔内外にランタンの沈着像が認められ、また、内皮細胞の小孔や小胞、細胞間結合部においても同様にランタンの沈着像が認められた。 以上の結果から、軟骨内骨化過程におけるラット下顎頭関節軟骨石灰化層へ侵入する毛細血管は、高い増殖活性を示すものであり、また、石灰化機構ならびに軟骨吸収のための物質交換を内皮細胞の小孔、小胞、さらには細胞間結合部をも介して行う、優れた物質透過性を有する血管であることが示唆された。
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