日和見感染の起因菌であるCandida albicansは、酵母形から菌糸形へと形態変換を起こす二形性真菌である。この形態変換そのものが病原因子の一つとして捉えられているが未だ不明な点が多く、そのメカニズムの解明を目的として研究を進めている。 その過程において我々は、C.albicans菌体より酵母形から菌糸形へと形態変換を起こす発芽管形成誘導物質を抽出し、分離することに成功した。この物質は親水性を示す物質であり、またフェノール硫酸に反応したことより糖成分を含む物質であることが考えられる。物質の成分に関しては、現在分析を行なっている。 さらに、この物質が菌を全く異なる形態に変換させたことより、がん化した動物細胞であるChinese hamster ovary cell(CHO-K1)を用いて、細胞における分化誘導活性を調べる目的で実験を行なった。物質を添加した培地でCHO-K1の培養を行なった結果、 (1)敷き石状の細胞形態から線維芽様細胞形態へと変換した (2)細胞の増殖抑制が認められた (3)細胞からのTNF-α産生抑制が認められた C.albicans菌体より得られた物質がどのようなメカニズで細胞に作用しているかは全く分からないが、がん細胞に対して形態的だけでなく機能的にも何らかの影響を与えている事が示唆された。
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