「目的」 LPSを認識する様々な細胞表面分子が単球/マクロファージあるいは活性化した好中球や血管内皮細胞において示されGPIアンカー型の膜蛋白質であるCD14が受容体として機能するこが報告されている。近年、歯周病原性細菌由来LPSに刺激されたヒト歯肉線維芽細胞(HGF)はIL-1や6など様々なサイトカインを産生すると報告されているがHGFのLPS認識機構は明らかにされていない。本研究ではLPSに対してHGFが応答する際の認識機構と細胞内情報伝達機構を解明することが目的である。 「方法」 HGFへのLPS結合能、CD14の発現をFITC標識の抗体を用いてフローサイトメトリー(FACS)で分析した。さらにHGFにLPSと抗CD14抗体を添加した培養系のIL-6量をELISA法により測定した。 LPS刺激HGF中のリン酸化蛋白質の存在を抗リン酸化チロシン抗体を用いてウエスタンブロット法で同定した。次にLPS刺激HGFを抗リン酸化チロシン抗体に免疫沈降させ、沈降画分を抗MAPキナーゼ抗体でウエスタンブロット法で分析した。 「結果および考察」 HGFにはLPS結合能とCD14の発現がみられた。抗CD14抗体、LPS添加によるHGF培養上清中にはIL-6の産生はみられなかった。LPS誘導性のチロシンリン酸化は42kDの蛋白質が著しく誘導された。以上の結果よりHGF膜上のLPS受容体はCD14と考えられ、LPSがCD14に結合しリン酸化が起こり、MAPKが活性化されるものと示唆された。 「結論」 歯周疾患発症のひとつの細胞内情報伝達路の可能性として、HGFに対してLPSはCD14を介してリン酸化がおこりIL-6が産生される。その結果、破骨細胞の活性化を誘導し骨吸収に至ることが考えられた。
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