研究概要 |
唾液腺腫瘍細胞(HSG)はアクチノマイシン-Dおよびアドリアマイシンによりアポトーシスが誘発されるが,血球系の細胞に誘発されるタンパク合成ならびにタンパクリン酸化に依存したヌクレオソーム単位での切断を伴ったアポトーシスとは異なっていた.そこでHSG細胞にはこの細胞(唾液腺細胞)に固有のアポトーシス誘発機構が存在していることが推察され,この特異的アポトーシス誘発機構がこれまで報告されているアポトーシス関連遺伝子(c-myc,bcl-2,p53)の発現により特徴づけられているのではと考えこれら遺伝子の発現量の変化を検討した. 感度的に非常に優れているRT-PCR法による測定を行うためにc-myc,bcl-2,p53それぞれのDNAプライマーを合成した.特にbcl-2に関してはスプライシングの違いによりアポトーシス調節機構の異なる2つのtranscript(α,β)が存在することが知られているため,それぞれを検出できるようプライマーの設定を行った.さらにbcl-2ファミリーのbcl-xについてもbcl-x_Lおよびbcl-x_Sそれぞれ検出できるようプライマーを設定し検討を行った.PCR反応生成物は塩基配列を決定し確認を行った.唾液腺腫瘍細胞(HSG)をアクチノマイシン-Dおよびアドリアマイシンを作用させることによるこれら遺伝子産物の変動は,血球系の細胞の場合における変化と大きな違いが見られなかった.この結果よりHSG細胞のアポトーシス誘発機構には固有のアポトーシス調節が存在していることが推察され,今後これらの遺伝子を検索していきたいと考えている.
|