研究概要 |
本研究では,耳下腺腺房細胞におけるアミラーゼ分泌に関わるタンパク質の検索を行った.我々は,耳下腺腺房細胞の分泌顆粒に,神経伝達質の開口放出に関わるタンパク質であるVAMP-2が存在しており,cAMP依存的なアミラーゼ分泌に関わっていることを既に報告している.しかし,神経細胞においてVAMP-2と相互作用して膜融合に関わっているsyntaxin 1やSNAP-25は,耳下腺では検出されなかった.そこで,本研究では,耳下腺腺房細胞において,アミラーゼ分泌に関わるVAMP-2以外のタンパク質の検出を試みた.特に,VAMP-2の普遍的なホモログであるcellubrevinや,VAMP-2と直接結合すると言われているsyntaxin 4について,解析を行った. そのために,VAMP familyを共通に認識するウサギポリクローナル抗体(anti-SER4256)を作成し,耳下腺の細胞画分についてウエスタンブロットを行った.その結果,anti-SER4256によって認識される15kDa(p15)および18kDa(p18)のバンドが検出された.p18は,抗VAMP-2抗体によって認識されるバンドと分子量が一致しており,VAMP-2であると考えられた.p15及びp18は共に,ボツリヌストキシンBによって切断された.VAMP-1はボツリヌストキシンBによる切断部位は持たないことから,p15はcellubrevinであると考えられる.また,p15はVAMP-2と同様に,分泌顆粒膜に局在しており,アミラーゼ分泌に何らかの関与をしていることが予測される. また,syntaxin familyの中で,VAMP-2に対する結合能を持つものはsyntaxin 1と4であることが既に報告されている.そこで,抗syntaxin 4抗体を用いて,耳下腺の細胞画分についてウエスタンブロットを行った.その結果,抗syntaxin 4抗体によって認識される32kDaのバンドが膜画分に存在することが明らかになった.syntaxin 4は,VAMP-2と協同して刺激応答性のアミラーゼ開口放出に関わっていることが期待される.
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