1.固体別・歯種別糖鎖分析 12匹のブタの永久大臼歯及び永久切歯歯胚から固体別及び歯種別に集められた幼若エナメル質から抽出され、逆相HPLCによって精製された32kDaエナメリンについてグリコペプチダーゼFを用いて糖鎖を遊離させ、PA化を行い、糖鎖分析を行った結果、既に判明している32kDaエナメリンに結合しているN型糖鎖のHPLCによる溶出パターンと同様に、全ての試料から8種類の糖鎖が検出された。これら糖鎖については、固体間及び歯種間でバイアンテナ型とトリアンテナ型の糖鎖の比に有意差が見られた。 2.糖鎖結合部位糖鎖分析 30匹以上のブタの永久大臼歯歯胚から上記方法で精製された32kDaエナメリンにV8プロテアーゼとプロナーゼを作用させ、逆相HPLCを行うことによって、糖鎖結合部位を1箇所ずつ含む3つの糖ペプチドが得られた。これらについて上記方法で糖鎖の遊離及びPA化を行い、糖鎖分析を行った結果、^<72>Asn及び^<79>Asnの結合部位からはそれぞれ5種類と2種類のバイアンテナ型のPA化糖鎖が、また^<91>Asnの結合部位からは3種類のトリアンテナ型のPA化糖鎖が検出された。さらにシアリダーゼ処理の結果、それぞれの糖鎖は共通のアシアロコア構造を有していることが判明した。また、各糖ペプチドの糖鎖あたりの結合シアル酸数は^<79>Asnに結合している糖鎖において著しく減少していた。 以上のことより、糖鎖の多様性は歯種による違い、または個体差で生じるのではなく、3箇所の糖鎖結合部位に結合している糖鎖のシアル酸の結合様式と結合位置の違いによって生じることが判明した。また、シアル酸の分解は、3箇所の糖鎖で均一に行われていないことが示唆された。この脱シアル化が幼若エナメル質中に存在するかも知れないシアリダーゼによるものかどうかを解明することが今後の課題となる。
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