フラボノイド類であるカルコン、2-ヒドロキシカルコン、ケルセチンはそれぞれ4-ニトロキノリン-1-オキサイド(4-NQO)誘発ラット口腔発がんモデルにおいてイニシエーション期(4-NQO投与期間中に被検物質を投与)、後イニシエーション期(4-NQO投与終了後に被検物質を投与)いずれに投与しても、口腔発がん(特に舌扁平上皮がん)の抑制効果を示した。4-NQO単独投与群に比べ、カルコン、2-ヒドロキシカルコン、ケルセチンそれぞれのイニシエーション期投与群においては口腔発がんを66%、77%、77%抑制し、後イニシエーション期投与群においてはそれぞれ66%、66%、88%の抑制効果を示した。また、前がん病変においてもイニシエーション期、後イニシエーション期のいずれかに投与したすべての被検物質において抑制傾向を認めた。カルコン、2-ヒドロキシカルコン、ケルセチンはいずれも著明な副作用を認めなかった。同時に、Biomakerとして舌組織中のポリアミン濃度とBrdU標識率を測定したが、ポリアミン濃度については総ポリアミン濃度において4-NQO単独投与群に比べ、4-NQOと被検物質投与群で低下傾向を示し、BrdU標識率においても4-NQO単独投与群に比べ、4-NQOと被検物質投与群で有意に低下した。以上の結果より、カルコン、2-ヒドロキシカルコン、ケルセチンいずれも口腔発がん抑制物質としての可能性が示唆され、その抑制効果の1つに細胞増殖抑制効果が推察された。今後、さらにその他の口腔発がん抑制物質の探究を行うとともに、これらの物質の抗癌剤との相乗効果や副作用の軽減効果について研究を行う予定である。
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