p21遺伝子は細胞周期を止め、増殖を停止させる働きを持つ遺伝子である。よって、p21遺伝子を細胞内で絶えず発現させると細胞は増殖を停止させるため、p21遺伝子を細胞内で永続的に発現させた細胞を得た論文はない。本研究では、p21遺伝子と制御遺伝子を同時に細胞に導入しp21遺伝子の発現を制御できるシステムを作り、永続的な発現細胞を作製し、p21遺伝子による細胞周期の停止と放射線に対するアポトーシス制御のメカニズムを明らかにする予定である。 実験概要は、 【発現ベクターの作製】ヒトp21遺伝子の制御遺伝子を薬剤(ハイグロマイシン)耐性遺伝子を持つ発現ベクターに組み込んだ(発現ベクター1)。ヒトp21遺伝子を薬剤(ネオマイシン)耐性遺伝子を持つ発現ベクターに組み込んだ(発現ベクター2)。【細胞への導入と発現細胞の選択】細胞(白血病細胞であるU937)に発現ベクター1を電気穿孔法にて導入した。培地中に薬剤(ネオマイシン)を入れ薬剤耐性の細胞を単離した(50個)。単離した細胞が制御遺伝子を発現しているかどうか各細胞から蛋白質を調製してWestern法を行った。その内、制御遺伝子を発現している細胞を2種選択し増殖させた。それに発現ベクター2を電気穿孔法にて導入した。培地に薬剤(ネオマイシン)を入れ薬剤耐性の細胞を単離した(50個)。この細胞では、制御遺伝子蛋白がp21遺伝子のプロモーターに結合することにより、p21遺伝子の発現を通常は制御している。そして、IPTGを細胞に加えることにより、制御遺伝子蛋白はp21遺伝子のプロモーターより外れ、p21遺伝子を発現させるというメカニズムなので、単離した細胞の培地中にIPTGを入れた後、p21蛋白質を発現しているかどうか各細胞から蛋白質を調製してWestern法を行った。IPTGを細胞に加えることによりp21蛋白質を誘導する細胞を得た。 しかし、p21遺伝子の発現を完全に制御することができる細胞は得れないため、再度細胞の選択を行う予定である。
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