ヒトの疾患に対応する動物実験モデル系を確立することは、その疾患の成立機序並びにその生物学的特性を明らかにする上で重要な第一歩となる。今回、in vitroでラット菌胚を4-nitroquinolin l-oxide(4NQO)暴露した場合、高率に角化性の嚢胞が発生することが確認できたので、その実験系について報告する。 F344系ラット胎仔(胎生17日)の切歯の歯胚組織を4NQO(1ppm)を含む培養液、あるいは4NQOを含まない培養液で3日間培養した後、同系ラットの腎被膜下に移植した。移植1週、2週、4週後に移植片を摘出し、連続切片を作製して病理組織学的検索を行った。 4NQOに暴露した歯胚では、腎被膜下移植4週後におよそ90%の頻度で角化性の嚢胞の形成が認められた。この嚢胞は硬組織形成前のエナメル器が、嚢胞性の変化を起こしてできたものであると考えられた。4HQOに暴露しなかった歯胚では、歯芽構造の形成を認めたが、嚢胞形成は見られなかった。 以上の結果から本実験系は歯原性嚢胞の組織発生を考えるうえで、極めて有用であると思われた。
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