口腔腫瘍に対する放射線治療において重要な副作用の一つである放射線骨障害とアポトーシスの関係に注目し、骨芽細胞におけるアポトーシスの存在やそのpathwayに関してヒト骨芽細胞様細胞(SAOS-2、MG63)及びマウス骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を用いて実験を行った。そして平成8年度の研究期間中に、3種の骨芽細胞様細胞に蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤(10nMオカダ酸及び2nMカリクリンA)を投与することにより、同細胞にそれぞれ一様にクロマチンの凝集および断片化が生じることを確認した。これは、骨芽細胞様細胞におけるアポトーシスの存在とそれに対する蛋白質脱リン酸化酵素(特にPP-1、PP-2A)の関与を示唆するものである。さらに、その際、SAOS-2及びMG63細胞で生じるDNAラダーパターン形成がMC3T3-E1細胞では生じないこと、またSAOS-2及びMG63細胞でのDNAラダーパターン形成にも蛋白質脱リン酸化(特にPP-1、PP-2A)が関与していることを報告した(Morimoto Y.et al.in press)。さらに我々は、MG63細胞では、このアポトーシスが低濃度の蛋白質合成阻害剤(シクロヘキシミド)により部分的に抑制されることを確認した(Morimoto Y.et al.in preparation)。この結果は、MG63細胞では、この系のアポトーシスに新しい蛋白合成が関与していることを示唆するものである。
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