研究概要 |
歯根膜細胞をin vitroで培養・増殖させ、これをin vivoに移植することが歯周組織再生に有効であることが示唆されている。しかし、培養した歯根膜細胞の継代数や象牙質の根面処理方法の違いが、歯周組織再生に及ぶす効果は全く不明である。近親交配ウイスター系ラットから上下前歯を採取、歯根膜細胞を培養、増殖させた。同時に抜去歯のセメント質を完全に除去し、縦2mm,横1mm,厚さ0.5mmの象牙質片を作製し、1Nクエン酸で1分間酸処理を行った。実験群は、これに培養した初代の歯根膜組織を播種し、象牙質片上でconfleuentになるまで4週間培養し移植を行った。対象群は細胞付着のない象牙質片を移植した。歯根移植群は健康な歯根膜の付着した新鮮抜去歯を獲得して直ちに移植した。3群とも移植部位はラットの頭蓋骨上とし、被験面を骨側面にして静置、Gore-Tex膜で被覆して弁を縫合した。2, 4, 6週間後に屠殺して、被験象牙質面の形態を評価した。その結果、対象群は2週ですでにほぼ前面が根吸収がみられ、4, 6週ではさらに根吸収が進行していた。歯根移植群は2, 4週は、歯根膜が残存していたが、6週では根吸収が観察された。実験群は、2週例では結合織が根面の線維と結合している状態であり、4週でははセメント質様の硬組織新生部分が認められたほか、骨性癒着や結合組織性付着の像も認められた。6週では全て骨性癒着していた。以上の結果から、培養歯根膜細胞を移植することは、歯周組織再生に効果が認められたが、頭蓋への移植では長期間の観察には限界があることも示された。現在は培養を重ねて5代,9代,13代,の細胞を獲得しているところであり、象牙質処理のクエン酸濃度を0.5N, 0.25N, 0.125N、各実験群の観察期間を2, 4週として、実験を追加している。したがって、近日中に本実験の成果を定量的に明らかにできる予定である。
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