研究概要 |
酸化電位水に防錆剤を添加した場合の歯科用金属器具の耐食性の変化を分極抵抗値(Rp)を測定することで評価した。炭素鋼であるカーボンスチールバ-とステンレスの根管治療用リ-マ-を材料とし、試料電極を作成した。酸化電位水に防錆剤として安息香酸ナトリウム、ピロりん酸ナトリウムを0.001, 0.01, 0.02, 0.03, 0.04, 0.05, 0.1%添加し、pH, ORPを測定後、試験溶液とした。試料電極を60分間試験溶液に浸漬後、CORROSION MONITOR(東方技研社製)にて、分極抵抗値(Rp)を測定した。Rpの逆数は腐食速度に比例することがしられており、腐食抑制の効果をRpを指標として評価した。 酸化電位水は、pH2.7以下、ORP1100mV以上で本来の消毒効果を発揮する。安息香酸ナトリウム、ピロりん酸ナトリウムともに、0.02%の添加まではこの条件を満たし、無添加の酸化電位水と同様な効力が保たれると思われる。炭素鋼の場合、安息香酸ナトリウム0.02%添加で最も大きなRpを示し、防錆剤無添加の場合と比べ有意な腐食抑制効果を示した。一方、ピロりん酸ナトリウム添加の場合では0.02%以下では腐食抑制効果を示さなかった。 ステンレスでは、安息香酸ナトリウム添加では0.01%、ピロりん酸ナトリウムでは0.02%において腐食抑制効果を示した。今回の研究から酸化電位水に防錆剤を添加することで、酸化電位水の消毒効果を損なうことなく、歯科用金属材料への腐食が抑制されることが示され、金属器具消毒への応用の可能性が示唆された。しかし防錆剤の種類、濃度あるいは、対象金属によって腐食抑制効果が異なり、さらに検討する必要性がある。
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