研究概要 |
歯周疾患における歯肉上皮細胞の役割を検討するためにin vitrioで下記の実験を行った。まず、歯周病原性細菌の一つとして注目されているPorphyromonas gingivalisより超音波破砕産物(SE)、線毛蛋白ならびにリポ多糖(LPS)を調整した。これらをあらかじめ調べた至適濃度、至適時間で歯肉上皮細胞の培養液中に添加した。実験には歯肉上皮細胞にSV40 T antigen遺伝子を導入し、長期継代培養可能な細胞(OBA-9)樹立し、用いた。SEの刺激によりOBA-9はIL-1β,IL-6,IL-8,MCP-1,TNFα,cox-2などのmRNA発現の上昇を認めた。ところが、IL-1αのmRNAの発現には変化がなかった。また、線毛蛋白による刺激ではmRNA発現量の変化は少なく、LPS刺激では変化はほとんど見られなかった。IL-1βで刺激するとSEほどではないが上記mRNA発現量の増加が認められた。さらに、調べた炎症性サイトカインのうちMCP-1とIL-8のmRNA発現の増加量は他のサイトカインのそれよりはるかに大きいことが解った。また、蛋白質レベルでも同様の結果を得ることが出来た。さらに、遺伝子導入を行っていない歯肉上皮細胞においても上記の傾向を確認できた。以上の結果より、歯周病局所において歯周病原性細菌の菌体構成物により歯肉上皮細胞が活性化され炎症性サイトカインを分泌、とくに炎症細胞の走化性因子であるMCP-1ならびにIL-8を強く産生すると考えられ、歯肉上皮細胞が歯周炎発症、特に、歯肉の初期炎症に深く関与していることが強く示唆される。
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