歯周病においては、その進行に伴って接合上皮は根尖側に増殖深行しポケット上皮を形成するようになるが、それに伴い免疫担当細胞は結合組織内を通る血管内から結合組織へ遊走、定着するだけでなく上皮内さらには上皮外の歯肉溝への遊走も目立って多くなることが明らかとなっている。今回、申請者は歯肉溝への免疫担当細胞遊走機構を解明することを目的としてin vitroにおいてヒト歯肉から単離してきた歯肉上皮細胞を用いて上皮細胞と免疫担当細胞が如何なる状況で接着するかを明らかにすると同時に両細胞間の接着が如何なる接着分子により担われているかについて検討を行った。そこでまず、歯肉線維芽細胞と免疫担当細胞間の相互作用において既に確立されている細胞接着実験系を応用して細胞の^<51>Cr取り込み量を指標にして歯肉上皮細胞-免疫担当細胞間の細胞接着能を定量化できる系を確立した。そしてこの実験系を用いることによりT細胞系腫瘍細胞であるMolt-4と歯肉上皮細胞間の接着が惹起されうる条件を検討した結果、両細胞とも無刺激の状態では接着を示さないのに対して、Molt-4をPhorbol 12-Myristate 13-Acetate(PMA)にて活性化することにより上皮細胞に対して著しい接着能を示すようになった。また上皮細胞をPMAで活性化することによってもMolt-4との接着能を獲得することが明らかとなった。そこで次に、これら細胞間の接着が如何なる分子により担われているかについて検討するためにこの細胞接着実験系に抗-ICAM-1抗体を添加したところ、細胞間の接着が阻害されたことからこれら細胞間接着にICAM-1が関与していることが明らかとなった。しかしながら、この阻害は部分的であるためICAM-1以外の分子も関与しているものと思われる。そこで今後、さらに他の関与している分子についても検討を行う予定である。
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