研究概要 |
我々はこれまで,マウスマクロファージ細胞株であるJ774.1細胞に,若年性歯周炎の主たる原因細菌と考えられているActinobacillus acinomycetemcomitans(A.actinomycetemcomitans)を感染させたところ,アポトーシスにより細胞死に至ることを明らかにし,報告してきた。そこで,歯周病発症における歯周ポケットの形成にアポトーシスが関与する可能性について本研究において検討した。 口腔上皮細胞株であるKB細胞を用いて,マクロファージ感染のin vitroの培養系を応用して,A.actinomycetemcomitansを感染させた。この結果,A.actinomycetemcomitansの感染によりKB細胞に細胞死が発現される可能性が示された。加えて,位相差顕微鏡により感染後の細胞形態を観察したところ,アポトーシスを思わせる細胞所見が認められた。現在,電子顕微鏡による観察を進めている。さらに,A.actinomycetemcomitans感染後,ELISA法によりDNAの断片化を比色定量したところ,A.actinomycetemcomitans感染細胞においてDNAの断片化の発現,すなわちアポトーシス発現の可能性を示す結果が得られた。 以上の結果を踏まえ,現在,ヒトから採取した歯肉上皮細胞を用いてA.actinomycetemcomitans感染後の細胞動態の検討を行い,歯周ポケット形成におけるアポトーシス関与の可能性について詳細に調べる予定である。
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