研究概要 |
歯周炎組織中ではT細胞と歯周組織の主たる構成細胞である歯肉線維芽細胞(HGF)はサイトカインネットワークを形成し、本疾患の発症及び進行を制御していることが知られている。T細胞のサブセットであるTh1、Th2細胞はIFN-γ,IL-4をそれぞれ産出し、炎症歯周組織中の免疫応答を制御していると考えられている。我々はIL-1βがHGFの細胞画分にIL-1αを、培養上清中にPGE_2を産出誘導すること、さらにこの細胞画分IL-1αは細胞接着により、骨吸収とHGFによるPGE_2産生、コラ-ゲナーゼ活性を誘導することを明らかにした。そこで今回我々は,HGFの細胞画分IL-1αおよびPGE_2産生に及ぼすIFN-γとIL-4の作用を検討し、以下の結果を得た。 1.IFN-γの前処理により、IL-1βが誘導する細胞画分IL-1α産生は亢進した。一方、IL-4の前処理はこれをわずかに抑制した。 2.IL-1レセプター数はIFN-γ刺激により促進され、IL-4刺激では抑制された。 3.IFN-γあるいはIL-4とIL-1βで同時刺激すると、細胞画分IL-1α産生は抑制された。 4.IL-1β刺激で誘導されるPGE_2産生はIL-1α抗体添加により抑制された。 5.IL-4あるいはIFN-γとIL-1βで同時刺激すると、IL-1βによる誘導されるPGE_2の産生は抑制された 今回の研究において、歯肉線維芽細胞の細胞画分IL-1αとPGE_2産生は、それぞれTh1、Th2細胞により産生されるIFN-γ、IL-4により促進的あるいは抑制的に制御されていた。 このことは歯周炎罹患歯肉中において、IL-4とIFN-γは歯肉線維芽細胞のIL-1αおよびPGE_2産生を制御することにより、歯周病病態形成に関与している可能性が示唆された。
|