根管充填時に溢出した材料の排除機構においてマクロファージが重要な役割を果たしていると考えられる。前回までにラット腹腔マクロファージに各種根充用セメント粒子を作用させ、その貪食状態を光学及び走査電子顕微鏡にて確認した。そこで今回、溶解剤としてCHAPSを用いることによりマクロファージの細胞骨格を露出させ走査型電子顕微鏡(SEM)を用い根充用セメントの種類、作用時間の差により貪食状態、貪食様式をより詳細に観察し、比較検討することが今回の目的である。すなわち、4種の代表的な根管充填材を硬化させ、微粒粉砕機にて粉砕し粒子をPBSに懸濁し、超音波槽及び超音波破砕機にて微細化し被検試料を作製した。ラット腹腔よりマクロファージを採取し、FCS加RPMI1640液にて1×10^7Cells/mlに細胞浮遊液を調製し、インキュベートし、マクロファージの付着、伸展を増強するために、PMA(phorbol myristate acetate)処理を施した。その後、マクロファージが付着しているカバーグラスを入れたシャーレに被検試料を注入し、インキュベートした。30.60.120分後に培養液と0.5%CHAPS(RPMI1640)を交換し細胞質を溶解し、細胞骨格を露出した後、マクロファージが付着しているカバーグラスを取りだしグルタールアルデヒド及び四酸化オスミウム溶液にて固定、アルコール系列により脱水、凍結乾燥後、金蒸着し、貪食状態を走査電子顕微鏡にて観察した。貪食させる根充材粒子自体の細胞障害性が高いため、PMA処理を施したにもかかわらず、CHAPSによる細胞質溶解の過程で、細胞が剥離してしまうため、現在、PMA処理、CHAPSの濃度、作用時間などを変更し、実験を継続中である。細胞骨格が安定して確認可能となれば、その後、コンピューターに画像を取り込み根充用セメントの種類、作用時間の差によりそれぞれの貪食様式を比較、検討する予定である。
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