ブラキシズムに代表される夜間睡眠時の顎口腔系の異常機能は、顎機能異常発現の要因として注目されているが、その動態については未だ不明な点が多く残されている。本研究では、夜間睡眠時における咬頭嵌合位付近の下顎運動を、高精度でかつ被験者に異物感を与えることなく記録可能な測定装置を開発すること、さらに、この装置を正常者並びに顎機能異常者に対して応用し、睡眠時の下顎運動様相を詳細に観察することを目的とした。 今年度の研究実績は以下の通りである。 1.下顎運動測定装置の改良 従来より本研究者らは、小型PINフォトダイオードを用いて睡眠時下顎運動装置を開発してきたが、二次元的な検出範囲にとどまっていたため、今回さらに高精度な検出が可能な三次元測定装置へと改良を行った。主な改良ポイントは、発光部については従来の定常光発生に対し新たに発振回路を加え1KHzのパルス光発光としたこと、さらに増幅系については従来の差動増幅からセンサ1枚ごとの増幅演算にしたことである。精度検定の結果、センサ中央付近で最大約200μm、センサ周辺部で最大約400μmの誤差が認められた。 2.下顎運動検出装置の被験者への応用 本検出装置をブラキシズム患者(29才の成年男子1名)に応用し、夜間睡眠時の下顎運動を連続的に記録した。その際、左右側頭筋前部と左右咬筋浅部の4筋活動の併せて測定した。その結果、筋の活動状態と三次元的な下顎の動きを時間の経過とともに明確に把握することが可能になった。 尚、本研究成果の一部は、第95回日本補綴歯科学会学術大会にて発表した。
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