インプラント植立予定の本学外来患者について、患者の同意を得てCT撮影を行った。画像再構成を行い、得られた冠状断面像をイメージスキャナ取り込み、キ-ポイントをコンピュータ入力した。各2次元断面の輪郭はキ-ポイント群を通るスプライン近似による3次曲線で作成し、さらにスキニング手法によって各断面を滑らかな曲面で結び、下顎臼歯部の有限要素モデルが構築された。このモデルは非常に現実に近似した形態を再現しており、また要素分割は誤差評価法に基づいて行い3万程度と従来の研究に比較して十分に多く、誤差は少ない。さらに歯冠における隣接接触部には接触要素を用い現実に近似した接触関係をシミュレートした。加えて本研究のモデルは天然歯及びインプラントについて臨床的実測データと検証を行い妥当性を得ている。すなわち本研究はきわめて精度の高い結果に基づくものであると考える。 咀嚼時を想定した三次元有限要素法による動的解析の結果、インプラントに加わる荷重は、主にインプラント頸部の皮質骨部で支持され、海綿骨部の支持はわずかであることが示唆された。よって長いインプラントを用いて海綿骨部の接触面積を増やすよりも、直径の大きいインプラントを用いて皮質骨部の接触面積を大きくした方が力学的に有利であることが示唆された。インプラント同士を上部構造で連結した場合、特に近遠心方向の衝撃に大きな効果がみられ、最大65%の応力緩和が示された。垂直荷重時には連結の効果が少なく、荷重の加わったインプラント周囲にのみ応力が集中した。天然歯とインプラントを連結した場合、天然歯側のインプラントに著明な応力集中を示し、さらに天然歯のみに加わる荷重を与えても、インプラント周囲に大きな負担を強いることが認められた。
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