研究概要 |
現在市販されている陶材焼付用合金には力学的な問題や生体適合性の問題等がある。そこで強度が高く,生体為害作用の少ないと言われているチタンを陶材焼付冠に使用することは有益である.しかし,チタンと陶材の接合強度は従来の陶材焼付用合金に比較して劣っており,その原因の一つとして,陶材焼成時にチタン表面に過剰に生成されるチタン酸化物が考えられている.本研究では,陶材焼成時,界面の過剰なチタン酸化物の生成量を減少させるために,チタンに前処理を行ってチタン表面に水素との化合物を作り,その上に陶材を接合させて,陶材との接合強度を測定した.さらに,チタンと陶材との接合界面の反応生成物を分析することにより,両者の接合機構について考察した.その結果水素雰囲気中にて500℃まで加熱処理を施したTiと陶材との接合強度は4.38±0.816MPaであり,これはコントロール群の接合強度,1.99±0.479MPaの約2倍の強度であった,450℃で処理した試料群の接合強度は2.10±0.318PMaであり,平均値ではコントロールを上回ったが,有意差はなかった.550℃で処理した試料群の強度は測定不可能であった.接合界面のSEM像観察の結果,水素雰囲気中にて500℃まで加熱処理を施した試料では陶材と金属は密に接合しており,界面に約1μmの反応層が観察された.金属表面のX線回折ではいずれの試料においてもTiO_2のピークが検出された.コントロールの試料に比べて,加熱処理をした試料ではTiO_2のピークの強度が小さかった.550℃の試料ではTixHyのピークが検出された.以上の結果より水素雰囲気中での加熱温度は500℃が最も適していることが分かった。また,加熱最高温度における稽留時間については、30分が最も効果的であった。さらに陶材とチタンの接合界面の元素挙動を調べるためにX線マイクロアナライザーを用いて線分析を行ったが,チタンや陶材成分元素の凝集は見られなかった.現在X線光電子分光装置を用いて,水素雰囲気中における熱処理後の表面の組成分析を行っている。
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