研究概要 |
動的咬合接触,そして下顎運動非対称性と顎機能異常との関連性を明らかにすることが目的であったが,動的咬合接触の定量化,評価法の確立に予想外の時間を要した.しかし,動的咬合接触そのものが,新たな概念であり,咬合理論の確立,顎機能の解明に大きく貢献したと考える.まず,側方運動の進行に応じた咬合接触の有無を記録した.このことにより,咬合接触様式の詳細な記述が可能となり,従来より行われてきた咬合様式評価方の問題点を指摘することができた.そして,臨床系に汎用性をもたすために,咬合接触を記録する顎位を限定する試みを行った.その結果,咬頭嵌合位付近と犬歯切端位付近の咬合接触のみで,すべての咬合接触を把握することが可能であることが示された.次に,動的咬合接触分類法の確立であるが,従来法の利点を活かし,また,臨床研究の観点から,いろんな目的にみあう応用性のある分類法を考案した.そして,その分類法の再現性については,術者間,術者内の再現性ともに,臨床研究目的を満たすことが示された.さらに,その分類法の妥当性については,その分類法を用いてすべての咬合接触様式が分類可能であること,そして,いろんな集団の咬合接触を特徴づけられること,そして,顎機能,咬合理論の概念を反映した分類であることなどの証明により検証された.この動的咬合接触の評価法,分類法の確立は,かつてあいまいであった,咬合理論,顎機能理論の検証をすべての面において可能にするものである.また,本研究のテーマである顎機能異常との関連については世界的にも混沌とした状態であるが,本研究での概念の提唱により,確実に前進することが期待できる.
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