当研究室で独自に開発した九大式非接触三次元精密変位計測システムを用いて、いわゆる健常有歯顎者20名と総義歯患者3名の前方運動、後方運動、左右側方運動(各4回)と、タッピング運動(10ストローク×4回)の計測を行い、データレコーダに記録した。この計測データを、AD変換により、パーソナル・コンピュータ上に記憶させた。一方、以下の4項目;(1)各条件下でのタッピング運動の安定性、(2)平均的タッピングポイントの算出、(3)タッピング運動時の顆頭運動、(4)ゴシックアーチ上の各方向での顆頭位置、を算出するプログラムを、パーソナル・コンピュータを用いて独自に開発した。これを用いて、各計測データの解析を行った。 健常有歯顎者20名の結果から、(1)タッピング運動は、安定性していた。 (2)タッピングポイントはゴシックアーチのアペックスとほぼ一致した。 (3)タッピング運動時の顆頭の移動量は極めて小さく、蝶番様の運動をした。 (4)ゴシックアーチ上の各方向での顆頭の平均的位置を算出し、平均的矢状顆路傾斜度、平均的側方顆路傾斜度も求めた。 現在の総義歯装着被験者は3例と少なく、健常有歯顎者、総義歯患者間の比較は行えなかった。今後、総義歯被験者は最低でも20名まで増し、2者間の比較を行う予定である。 以上より、補綴臨床上常識とされているゴチックアーチのアペックスとタッピングの関係の一部が科学的に検証できた。
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