研究概要 |
MRSで得られるエネルギー代謝状態が組織学的な検索結果にどう対応しているかは未解決である。本研究では、電気刺激によって咀嚼様下顎運動させたラット咬筋の筋細胞レーザーのエネルギー代謝を31P-MRSによって観察する一方、MRS測定直後に断頭し咬筋の組織学的検索を行うことによって、咬合挙上された咬筋におけるエネルギー代謝状態の変化と組織学的な変化の比較検討を行った。ラットの右側下顎臼歯部に化学重合レジンにて1mm挙上し、それぞれWistar系ラット雄(体重400〜500g)を用いて咬合挙上群とし、咬合挙上しないラット7匹を対照群とした。31P-MRS測定部位は咬筋中央部とし、咀嚼運動様下顎運動を再現するための電気刺激は、電気刺激装置を用いて、サーフェスコイルの外側に貼付するカーボン製表面電極からの直接刺激とし、電気刺激強度は、周波数5Hz、刺激持続時間は0.1msで一定とした。NMR測定条件は、パルス幅20μs、パルス間隔2s、加算回数100回とした。測定は,刺激前4分間、刺激中32分間および刺激後に8分間、4分ごとに経時的に行った。咬筋のエネルギー状態の指標としてPCr_1/Pi比を求めた。MRS測定の直後に、断頭の上、正中矢状断しそれぞれを標本とし、標本を10%中性緩衝ホルマリン固定後、EDTAエタノールで脱灰し、咬筋を含む部分をトリミングした後、パラフィン包埋し、通法に従い4mm切片(矢状断)を作製する、さらに,脱パラ後,HE染色を行い,組織学的検索に供した.その結果、咬合挙上側咬筋の運動時のエネルギー代謝状態は対照群と比較して有意(p<0.05)に低下すると同時に、咬筋の部分的な壊死、再生が生じていることが組織学的検索によって明らかになった。
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