研究概要 |
まず始めに,添加するフッ化物の決定を行った.具体的には,フッ化ナトリウム,フッ化スズならびにいままで研究を行ってきたフッ化インジウムを使用した.なお,添加量に関しては1,2,3.4,5ならびに20wt%とし,粉末の合成を行った.その結果,20wt%の場合,合成した粉末が非常に強固な硬化体を呈し,粉末の粉砕が困難な状態であった.5wt%以下では粉砕が可能でありセメント粉末としての応用が可能であることが示唆された.これらの合成の終了した粉末をX線回析装置を用いて結晶学的考察を行ったところ,添加量が3wt%以上になった場合,リン酸4カルシウムの基本パターンに変化が認められ,計画当初のあくまでもリン酸4カルシウムを主体とすることに問題が生じたために,添加量を1,2,3wt%とした.また,添加するフッ化物に関しては,前述の3種類に関して耐酸性,ヒトエナメル質に対する溶解性ならびに合成した粉末のX線回析装置を用いた結晶学的考察結果よりフッ化インジウムとすることとした.合成した各リン酸4カルシウム粉末をクエン酸ーリンゴ酸系の水溶液と練和を行い硬化体の形成が可能であるかの検討を行った.なお,粉液比はP/L=1.0g/1.0gにて行った.その結果,いずれの添加量においても硬化体の形成が可能であった.そこで,得られた硬化体に関してADA規格におけるポリカルボキシレートセメントの試験項目のうち硬化時間、圧縮強さならびに崩壊率について評価を行い,市販の裏層用セメントの物性と比較検討を行った.その結果,フッ化インジウムの添加量が増加するにしたがい,硬化時間は長くなる傾向に,圧縮強さは小さく,さらに崩壊率は大きくなる傾向を示した.また,市販の裏層用セメント比較した場合,圧縮強さならびに崩壊率に差が認められた.しかしながら,適切な粉液比の設定を行えば,裏層用セメントとしての有用性があると考えられた.
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