現在、歯科における修復・補綴物の作成方法として、コンピュータを用いたCAD/CAMシステムが、盛んに研究・開発されるようになってきた。当教室においても以前よりコンピュータ支援による補綴物の作製方法について検討を重ね、形状的に満足できる補綴物を自動的に作製することができるシステムを発表してきた。しかし、計測や加工時に誤差が発生し、支台歯に対して忠実な補綴物を作製するには、まだ検討の余地がある事が分かった。 そこでまず現在試作中のシステムにおける、レーザ変位計を用いた計測システムの精度について検討を行った。レーザ変位計による計測システムは、レーザの光が試料表面で反射した光をPSDセンサで感知し、光源とPSDセンサの位置関係から、三角測量の原理で距離を計測するものである。そのため試料表面が傾斜すると、PSDセンサは反射光を捕らえにくくなる。そこで、この傾斜角度と計測精度について、平板状の石膏資料を基に検討をおこなった。その結果、計測試料表面とレーザ光のなす角度が45°を超えると、急激に反射光を捕らえにくくなる事が分かった。これは試料表面でおこるレーザーの乱反射による散乱光が、本来PSDセンサが捕らえるべき反射光に影響を与えるためと考えられた。次に加工精度を計測するために、単純な補綴物形状の加工用NCデータを作製し、このデータを基にNC加工機でセラミックスを加工した。完成した補綴物を基準とした支台歯に合着したものを分割し、支台歯と補綴物の連合性を調べた。その結果、切削量の多い補綴物内部の咬合面倒において、切削量の多いマージン側より誤差が大きくなっていた。 これは切削量が増えるにしたがって、加工ツールの逃げ、あるいは被加工材のたわみ量が増えると考えられた。これら計測・加工時の誤差に対して、今後更にデータを収集・解析し、最適な補正がかけられるようなロジックを検討する必要があると考えられた。
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