研究概要 |
実験1. マウス可移植性腫瘍細胞の中で、肝臓への遠隔転移能を有する腫瘍細胞: RL♂1を用いて、以下の転移抑制実験を行った。菌体成分であるLPS (Lipopolysaccharide)は、その投与によって、肝臓においてIL-1, IL-6, IL-12, TNF-αなどのサイトカインの産生が誘導されることが知られている。腫瘍細胞接種の24時間前にLPSを腹腔内投与し、2週間後、肝転移形成を非投与群と比較した。非投与群は、著明な肝転移を形成し、正常な肝臓と比較して、その重量は4倍であるのに対し、LPS投与群は、若干の転移巣は認めたものの、その重量は正常な肝臓の1.18倍と、有意に肝転移を抑制した。一方、IL-1, TNF-α、あるいはその両方を投与しても肝転移の抑制は全く認めなかったが、IL-12投与でLPS同様の転移抑制が認められた。また、Dichloromethylene bisphosphonateを封入したリポソーム製剤を作製し、尾静脈から投与すると、肝臓のマクロファージを枯渇する事ができるが、この様なマウスではLPSの肝転移抑制効果が全く認められなかった。マクロファージ枯渇マウスにおいてその転移形成性は、正常マウスとの相違は認められず、以上の結果から、LPSによってもたらされる転移抑制効果は、マクロファージを介した現象であると推測される。 実験2. 当病院を受診した口腔癌患者の組織を一部採取し、免疫組織学的にCD44の発現とその患者の予後について比較、検討した。採取された19症例(昨年報告した13症例を含む)の内、7症例は強陽性、8症例は弱陽性、4症例は陰性であった。19症例の内、7症例に遠隔転移を認めた。転移部位はいずれも所属頚部リンパ節で、5症例はCD44強陽性例、2症例はCD44弱陽性例であった。CD44陽性例においてリンパ節転移が高頻度に認められ、そのうち1症例は、再発とリンパ節転移により死亡した。原発部位、治療内容(放射線療法、化学療法を行ったもの、外科療法のみのもの)が症例によって異なるため、それらの要因も含めて追跡していく予定である。
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