研究概要 |
(目的)p16に代表されるINK4蛋白は、サイクリンD/CdK4,6複合体を阻害することにより、真核細胞のG1/S期を制御すると考えられている。またp16遺伝子が多くの悪性腫瘍において異常を起こしているという報告から、この遺伝子は新たな癌抑制遺伝子として注目されるようになった。さらに、近年、p16と相同性をもつINK4ファミリーのp15,p18についても検索がなされている。本研究においては、これらの細胞周期制御遺伝子の異常の口腔扁平上皮癌発生との関連について検索を行った。 (対象.方法)当科にて手術、あるいは生検によって得られた48名の口腔扁平上皮癌患者の原発巣および、7例の口腔扁平上皮癌由来細胞株より得られたDNAを対象とした。p15,p16,p18遺伝子のそれぞれExon1,2についてPrimerを設定し、PCR-SSCP法にて変異の有無をスクリーニングし、SSCP-Positive症例に対しては、塩基配列決定法により点突然変異等の微少変異を検索した。 (結果)PCR-SSCP法にて、p15,p16遺伝子についてそれぞれ6例、p18遺伝子について4例に異常バンドを認めた。これらのうちp18遺伝子については塩基配列決定法の結果、2例がフレームシフト変異であった。 (考察)INK4ファミリーの悪性腫瘍における検索は、現在までに多くなされているが、p15,p18遺伝子の変異同定の報告は非常に少ない。しかし今回行った口腔扁平上皮癌について、p15,p16,p18のそれぞれに変異が認められた。以上により口腔扁平上皮癌発生には各遺伝子の異常が関与していることが示唆された。
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