研究概要 |
既に我々が確立した心腔内注射による乳癌の顎骨転移実験モデルを用いて乳癌の顎骨転移の形成過程・転移機構を明らかにするとともに転移腫瘍の顎骨内での浸潤増殖が破骨細胞性骨吸引に引き続いて起こることに着目し,強力な骨吸収阻害剤である新世代のビスフォスフォネートの投与による破骨細胞性骨吸収の抑制が,顎骨転移巣での癌の増殖を制御できるかどうかを検討した. エストロゲン非依存性ヒト乳癌細胞MDA-231を4週齢のBalb/C系雌ヌードマウスの左心室に心腔内注射することにより顎骨転移モデルを作製した. 顎骨転移モデル作成後ビスフォスフォネート皮下注群,PBS投与群(control)の2群に分け4週目にマウスを屠殺しその効果を検討した. エックス線学的評価 現有のSoftex X線装置(SRO-50)を用いて規格化した状態でエックス線撮影を行い骨吸収範囲を現有コンピューターに取り込み画像解析プログラムにて定量的に分析した。その結果,ビスフォスフォネート皮下注群はPBS投与群(control)と比較して有意に骨転移が抑制された。その程度は各個体間で四肢長管骨と顎骨とで相関が見られた。 組織学的評価 心腔内注射後,マウスを屠殺し,顎顔面骨をアルデヒド混合固定液にて固定後,脱灰後パラフィンに包埋し組織切片標本を作成し組織学的検討を行った。PBS投与群(control)では広範囲に顎骨が破壊され腫瘍が浸潤増殖し多くは皮質骨を破壊し顎骨外にまで浸潤増殖を示したが,ビスフォスフォネート皮下注群では転移巣の形成が抑制され転移形成を認めたものでもほとんどは皮質骨まで及ばず顎骨内に限局していた。以上より,本薬剤は顎口腔領域転移性腫瘍に対する補助療法としての有効性が示唆された.
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