我々はかねてよりバイオアクティブな生体材料であるディオプサイドについて様々な面から検討してきた。家兎下顎骨埋入実験ではディオプサイド面と母床骨面の両面から骨形成が生じることを確認しており、ディオプサイドは人工歯根材料などをじめとする医用材料として有用であると考えている。今回、我々はディオプサイドの骨組織に対する親和性を検討するために培養下の骨芽細胞に対する反応を定量的に検討し、骨組織への影響について研究した。 実験にはディオプサイド、チタン、ヒドロキシアパタイトの3種類の材料を使用した。継代3日目の骨芽細胞を、試料の入った10%ウシ胎児血清添加培地に播種し、5時間後に培地より採取できる細胞数を計数して相対的な細胞初期接着率を算定した。さらに継代3日目の骨芽細胞を試料の入った10%ウシ胎児血清添加培地に播種し、1日目、2日目、3日目の細胞数を計数して細胞増殖数を算定した。 相対的細胞初期接着率については、ディオプサイド、チタン、ヒドロキシアパタイトともにほぼ差異はなかった。また、細胞増殖数についてもディオプサイド、チタン、ヒドロキシアパタイトともに差異は認められなかった。チタン、ヒドロキシアパタイトなどは従来より生体親和性に優れた材料であると言われているが、我々の得た結果ではディオプサイドは個々の骨芽細胞に対してはチタン、ヒドロキシアパタイトなどに匹敵する優れた生体親和性を有することが示唆された。
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