研究概要 |
変形性関節症の約9割は、顎関節内障を伴っているといわれている。今回、クローズドロックの変形性関節症化について、その出現頻度と総括的な病態の関連性を知るために、下顎頭の骨変形があるものとないものに大別し、以下の4項目について比較検討を行なった。 臨床所見では、性別、年齢、病悩期間、開口域、疼痛、雑音の項目のうち、年齢について、骨変形があるものでは30才以下の症例が50%未満、骨変形がないものでは30才以下の症例が75%占めており、有意に差を認めた。 MR画像所見では、関節円板転位の程度については両者の間に有意な差を認めなかったが、関節円板形態については、変形なしと変形あり(肥厚化)、(菲薄化)とで出現頻度を比較すると、骨変形があるものでは円板変形ありが73%、骨変形がないものでは円板変形ありが20%占めており、有意に差を認めた。 関節鏡視所見では、 1.関節結節-隆起関節面を正常、病的所見(線維化、潰瘍)とで出現頻度を比較すると、両者の間に有意な差を認めなかったが、潰瘍所見は骨変形があるもののみに認められた。 2.関節円板表面を正常、病的所見(線維化,穿孔)とで出現頻度を比較すると、骨変形があるものでは65%、骨変形がないものでは30%に病的所見を認め、有意に差を認めた。また穿孔所見は骨変形があるもののみに認められた。 3.滑膜被覆面を正常、病的所見(血管拡張、過形成、線維化)とで出現頻度を比較すると、両者の間に有意な差を認めなかった。滑液所見では、グリコサミノグリカンの組成、ヒアルロン酸の分子量の項目のうち、ヒアルロン酸の分子量分布について、骨変形があるものの方が有意に低分化量傾向を示した。 以上の事より、顎関節内障を伴った変形性関節症では、年齢関節円板形態の変化、およびそれに伴う円板表面性状の変化、ヒアルロン酸の低分子量化が密接に関連し、病態を形成している事が示唆された。
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