研究概要 |
各種刺激により頭皮上から得られる大脳誘発電位;cerebral evoked potentialは、比較的短い潜時で生じ刺激に直接関連して知覚などの外因性の要素を反映する刺激関連電位;stimulus-related potentialと、長い潜時で生じ刺激の性状の認知などの内因性の要素に関連する事象関連電位;event-related potentialとに大きく分類されている。近年分析技術の進歩に伴い、体性感覚刺激によって中枢神経と末梢神経の一部に誘発される体性知覚誘発電位somatosensory evoked potential;SEPにおける電位発生源の一つである皮質成分については多くの検討がなされている。しかし向精神薬投与後のヒトSEP短潜時成分に関する報告は極めて少ない。薬物の臨床用量におけるヒト短潜時成分への影響を分析するためにはSN比の低減を計ることが必要であり、従来非常に困難であった。 そこで本研究に於いては前述の課題を克服するとともに被験者の協力を得て、midazolam、flumazenil、thiopentalsodiumのSEP短潜時成分に対する影響を分析した。midazolamはN20,P25に影響を与えず、P45潜時を延長しP100振幅を減少た。flumazenilはmidazolamの作用を拮抗した。thiopental sodiumはN20,P25,P45に影響を与えず、P100振幅を減少た。向精神薬はERP:event-related potential振幅を抑制する事が知られているが、本研究に於いてSEP短潜時成分に対しては多様な影響を及ぼすことが判明した。さらに、今回の研究は32chでの測定を行いトポグラフィを作成し、各薬物による後頭部頂領域の著明な抑制等を認めたが、統計学的検討は困難であった。今後はトポグラフィの定量的評価法の確立を課題としたい。
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