研究概要 |
われわれは、C3H/Heマウスに同系可移植性扁平上皮癌NR-S1細胞を移植し,腫瘍局所へのIL-2+IFN-βの併用投与,腹腔内への抗癌剤(BLM,CY,CDDP)の単独投与あるいは両者の併用投与を行い,腫瘍の増殖や生存率を観察した.同時に脾細胞の細胞障害活性,脾細胞の細胞表面抗原陽性率および腫瘍局所の病理組織学的変化について検討し,以下の結果を得た.1.IL-2+IFN-β投与群では投与期間中にのみ腫瘍の抑制が認められた.抗癌剤単独投与群では腫瘍増殖速度の鈍化は認められたが,腫瘍の縮小や消失には至らなかった.抗癌剤+IL-2+IFN-β投与群では有意な腫瘍の縮小が認められた.特にBLM+IL-2+IFN-β投与群では9例中2例(22.2%)のマウスに腫瘍の消失を認めた.2.生存日数については抗癌剤単独投与群で有意に生存日数の延長が見られた.抗癌剤+IL-2+IFN-β投与群は抗癌剤単独投与群に比べても有意な延長が認められた.3.YAC-1細胞に対する細胞障害活性(NK活性)ではCDDP単独投与群,BLM+IL-2+IFN-β投与群,CDDP+IL-2+IFN-β投与群が有意に増強していた.P815細胞に対する細胞障害活性(LAK活性)では,抗癌剤+サイトカイン併用投与群が低値ではあるが有意に増強していた.NR-S1細胞に対する細胞障害活性では,BLM+IL-2+IFN-β投与群とCDDP+IL-2+IFN-β投与群で対象群,および他の実験群に比べ有意に細胞障害活性が増強していた.4.脾細胞のThy1.2,L3T4陽性率では,BLM,CDDP単独投与群,BLM+IL-2+IFN-β投与群に有意な上昇が認められた.なおIL-2+IFN-β投与群はThy1.2のみに,CY+IL-2+IFN-β投与群はL3T4のみに有意な上昇が認められた.Lyt-2陽性率は各群に有意差は認められなかった.NK陽性率は各群とも有意な上昇が認められた.5.腫瘍局所の組織学的検索では,抗癌剤+IL-2+IFN-β投与群に多数の単核球や好中球の浸潤がみられ,これら単核球の多くはMac-1,asialo GM-1抗原陽性であることから,抗腫瘍効果には活性化マクロファージや活性化NK細胞の関与が示唆された.
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