研究概要 |
健常人と担癌患者の末梢血Tリンパ球数と血清DPPIV活性の関係を抗CD3,CD4,CD8およびCD26(DPPIV)抗体を用いてフローサイトメロリ-で検討したところ,担癌患者末梢血リンパ球数(P<0.001),Tリンパ球数(P<0.001),Tリンパ球サブセットのうちCD4(P<0.01)およびCD8陽性細胞数(P<0.05)は健常人に比べ有意に低下していた.担癌患者血清中のDPPIV活性はTリンパ球細胞膜DPPIV(CD26)抗原量と同様に健常人に比べ有意(P<0.001)に低下していた.非働化10%牛胎児血清,2-MercaptoethanolとTリンパ球刺激物質であるPHAまたはConA,Tリンパ球増殖因子であるIL-2を添加したRPMI1640培地を増殖培地とし,Lymphoprep^<TM>で分離した健常人単核球(以下PMNC)を,ポアサイズが0.45μmのメンブランで隔てた状態で癌細胞とco-cultureしたところ,PMNCのみで培養した対照に比べリンパ球のCell clump数および芽球化反応が低下(5〜25%)した.10%の健常人血清を含む増殖培地を用いた健常人リンパ球培養系において,口腔扁平上皮患者血清の割合を増加させるとリンパ球芽球化反応が低下する傾向がみられた. 以上の結果より,末梢血Tリンパ球数と血清DPPIV活性の間には正の相関関係がみられること,担癌患者血清によりTリンパ球刺激物質または増殖因子によるリンパ球芽球化反応が低下することが明らかとなり,癌細胞由来の液性因子がTリンパ球の活性化とCD26(DPPIV)の発現を抑制している可能性が示唆された.
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