嫌気性を持つジメタクリレート類をモノマーとして用いながら、かつ表層部まで十分な機械的強度を持つ硬化物が得られるよう検討した。いわゆるエアバリアーを用いるのは操作が繁雑になるため、矯正用接着剤としては望ましくないので、反応性を有する複合フィラーを用いることにより、表層部での重合性を高めた。反応性を有する複合フィラーは、疎水性コロイダルシリカと多官能性モノマーとを練和混合粉砕して、いわゆる有機質複合フィラーとした。二重結合間距離が短い多官能性モノマーを用いることにより、残存二重結合量を増大させ、粉砕によって二重結合が表面に露出し、フィラーが反応性を持つように調節したものを使用した。そしてこのフィラーを利用し、得られた硬化物の機械的性質を検討評価した。併せて接着強さの検討を行った。 多官能性モノマーはNPG、TMPT、EDMA、ベースモノマーはTEGDMA、UDMAについて検討した。光照射し試料において、圧縮強さ、ダイヤメトラル引張り強さ、吸水率、残存モノマー率、ペンダント二重結合率を測定し、機械的性質を検討した。表層から深層にかけてミクロブリネルかたさ試験機を用いてかたさを測定し比較することにより重合性を評価し、エアインヒビションの役割を検討した。TMPTおよびTEGDMAの組合せが最良だった。 オートグラフにて引張り接着強さを測定した。添加する接着性促進モノマーとして、HPPM、HNPMについて検討した結果、HNPMが優れていた。破断面の、走査型電子顕微鏡での観察、および接着耐久性についても検討も同様の結果だった。 乳酸に対するカルシウムイオン溶出量を測定し、耐酸性を検討した結果、他の接着剤に比較し優れていた。
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