研究概要 |
口蓋粘膜瘢痕形成の詳細な機構を解明する目的で、形態形成において重要な役割を担うことが知られている筋線維芽細胞とアポトーシスとの関連性について検討した。 ラット口蓋粘膜を外科的に切除後、口蓋の前頭断切片を経字的に作成し、細胞増殖ならびに筋線維芽細胞分化の指標としてproliferating cell nuclear antigen(PCNA),平滑筋型α-actin(α-SMA)を用いた免疫組織学的観察を行った。アポトーシスはTUNEL法によりin situにて検出した。また同時に、正常口蓋粘膜および口蓋粘膜瘢痕組織よりそれぞれ繊維芽細胞の分離培養を行い(PF,SF)、各種細胞成長因子によるアポトーシス誘導を観察した。 その結果、1)in vivoにおいて、PCNA陽性間葉系細胞は口蓋粘膜切除後早期より出現し、上皮化が完了する10日目以降に減少した。α-SMA陽性線維芽細胞は14日目に顕著に出現し、その後急激に減少した。線維芽細胞のアポトーシスは14日目で最も多く認められた。2)in vitroにおいて、PFに細胞成長因子を投与してもアポトーシスは見られないがSFにtransforming growth factor-β1(TGF-β1)、basic fibroblast growth factor (bFGF)を加えるとアポトーシスが誘導された。PFをTGF-β1を用いて予め筋線維芽細胞に分化させた後、TGF-β1,bFGFを加えると、アポトーシス細胞は著しく増加した。 以上のことから、口蓋粘膜創傷治癒における筋線維芽細胞消失の過程ではアポトーシスによる細胞死の機構がその一端を担い、さらに各種細胞成長因子が筋線維芽細胞のアポトーシス誘導に関与し得る可能性が示唆された。
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