歯肉マッサージが歯周ポケット内環境に及ぼす影響を調べるための準備として、我々は歯周治療を受けたことのない4-6mmの浅いポケットをもつ20名の被験者の歯肉微小循環機能を評価し、各パラメーター間の関係を分析した。微小循環機能のパラメータは、歯肉溝滲出液量、組織ヘモグロビン量、ヘモグロビン酸素飽和度、ポケット酸素分圧、およびポケット内温度とし、臨床評価値として歯肉炎指数、ポケットデプス、歯垢指数を用いた。歯肉炎指数が増加するのに従って、歯肉溝滲出液量およびポケット内温度が増加し、ヘモグロビン酸素飽和度およびポケット酸素分圧は減少した。歯垢指数と微小循環機能の関係にも同様の傾向が認められた。微小循環機能間の単相関係数はヘモグロビン酸素飽和度と歯肉溝滲出液量の間で-0.50、ヘモグロビン酸素飽和度とポケット内温度の間で0.55となった。偏相関係数はヘモグロビン酸素飽和度とポケット酸素分圧(0.58)およびヘモグロビン酸素飽和度とポケット内温度(-0.58)の間で0.5以上となった。ポケット酸素分圧を目的変数とし、ポケットデプス、歯肉溝滲出液量、組織ヘモグロビン量、ヘモグロビン酸素飽和度を説明変数とした重回帰分析ではヘモグロビン酸素飽和度の重回帰係数が0.65となりp<0.05の有意性を認めた。これらの結果よりヘモグロビン酸素飽和度がポケット内の酸素環境を規定していることが示唆された。その後、ブラッシングによる機械的刺激を歯肉に与え、ポケット酸素分圧を30分間連続測定した結果、初期値より増加する場合と減少する場合に分かれ、結果は一致しなかった。今後さらに詳しくブラッシング条件とポケット内酸素分圧との関係を追求したいと思う。
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