研究概要 |
近年,乳幼児の齲蝕罹患者率は年々減少する傾向にあるが,我が国においては依然として高い齲蝕罹患状態を示しているのが現状である。特に,1歳から3歳にかけての時期に齲蝕が急増しており,この時期の適切な歯科的アプローチが希求される。そのためには,乳歯齲蝕の発生に関与している様々な因子の早期発見が必要であり,効果的なスクリーニング方法が望まれる。今回,母親の口腔内状態(齲蝕罹患状態や齲蝕活動性)および生活習慣(間食習慣,歯磨き習慣,衛生習慣等)と乳幼児の口腔内状態との関係を調べることを目的として研究を行った。対象は,月齢18〜24ヶ月の患児71人とその母親で,口腔内検診,齲蝕活動性試験および母親の生活習慣に関するアンケートを実施した。結果,対象児の齲蝕罹患者率は9.9%,一人平均deftは0.28本であり,平均カリオスタット値は1.34であった。母親の齲蝕罹患者率は100%で,一人平均DMFTは13.6本であった。齲蝕活動性試験より,唾液中のS.mutans数が10^5/ml以上検出された母親は全体の68%で,対象児では44%であった。lactobacillus数に関しては,10^5/ml以上検出されたのは母親で32%,子供では5%であった。また,子供のカリオスタット値はその齲蝕罹患状態および母親のS.mutans数とlactobacillus数と有意な正の相関を示した。また,母親の口腔衛生感と子供のS.mutans数とに正の相関を認めた。すなわち,母親の口腔内状態や生活習慣が,子供の口腔内に反映されていることが示され,低年齢児に対してでも,母親の検査,問診により,齲蝕発生に対するハイリスク者をスクリーニングできる可能性が示唆された。
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