研究概要 |
顎変形症患者群における顎関節の観察円板と下顎頭骨変形の程度を,磁気共鳴映像法(MRI)と同時多層断層X線写真によって診断分類し,頭部X線規格写真によって計測した顎顔面形態(下顎非対称性)との関連を検討することで,顎関節内障による下顎成長障害が顔面成長に与える影響を検討した. その結果,片側性顎関節内障群において,顎関節病態の重篤度とオトガイ部(メントン;Me)の偏位量との間に有意な正の相関(ρ=0.288,p=0.020,n=66)を認めた.また,下顎骨の大きさと下顎枝高ならびに下顎骨体長の2成分に分け,顎関節病態の重篤度との相関を検討した結果,下顎枝高と顎関節病態の重篤度との間に有意な負の相関(ρ=0.327,p=0.011,n=66)が認められたが,下顎骨体長との相関は示されなかった. さらに,無症状ボランティア41名を対象として,MRIによる集団検診を行い,一般集団における顎関節内障発現率についても調査を行った.その結果,17名(41%)の左右いずれかの顎関節に円板転位が明らかとなり,病態の有無と臨床症状との関連は明確でないことも示された. 以上より,顎関節内障が下顎の成長発育に影響していることが強く示唆されたが,今後はさらに症例数を増やし,罹患年齢(若年期,成人)・病態程度・罹患期間などと関連づけ,より詳細な検討を要すると考えられた.さらに,骨吸収に先立つ下顎頭軟骨の破壊メカニズムを各個体の素因,性差,負荷などの因子と関連づけ,分子細胞レベルで解明することが必要である.
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