研究概要 |
小児の成長発育に伴う咬合の形成過程を三次元的に捉えることを目的とし,ダイレクトメッソッドによる三次元模型計測システムを独自に開発し,機械的精度,模型計測時の再現性,および咬合状態の再現性を確認し,臨床応用の可能性および有用性を証明した。計測システムを制御し,データ処理を行うプログラムを作成した。本計測システムにより,臨床的に正常咬合と診断された日本人小児の口腔内印象模型を対象とし,模型上に設定した計測点および咬合接触部位の計測を行った。座標値,計測点間距離により,各発育段階における正常咬合を有する日本人小児の歯列弓形態を数値的に検討した。小児の咬合状態をコンピューター・グラフィックスにより表示できるようにし,正常咬合を有する小児の各発育段階における標準的な小児の咬合状態を表すプロフィログラムを作製した。さらに咬合接触部位のデータにより,小児の成長発育に伴う歯列の形態変化と咬合接触部位の推移の関係が明らかになった。 今回の研究により,標準的な日本人小児の咬合の形成過程の様相を,数値的ならびに視覚的に把握することが可能であると思われる。また,数量化されたデータは,各発育段階における標準値として使用でき,標準的なプロフィログラムは様々な症例と重ね合わせることにより,診断することができる。すなわち,今回の研究の成果は,三次元的に小児の咬合の診断ができる新しい小児歯科臨床診断法として,実際に臨床応用し,様々な症例の分析や成長の予測などに用いることができると考えている。
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