研究概要 |
口腔内細菌の粘膜表面への定着因子の一つとして、シアル酸をもつ酸性スフィンゴ糖脂質が重要な役割を演じている可能性が考えられている。現在までさまざまな細菌及び細菌毒素、ウイルスが粘膜糖脂質をその定着受容体として利用していることが報告されている。しかしながら、実際粘膜上皮にどのような糖脂質が発現しているのか、あるいは糖脂質のみで粘膜上皮に定着が可能であるのか、それとも他の分子群との共役によるものであるか明らかにされていない。その理由として糖鎖の複雑な多様性、また糖鎖自体の解析が困難であることが挙げられる。したがって、現在まで糖鎖の解析は、糖転移酵素を中心に進められてきた。そこで我々は、粘膜上皮での酸性糖脂質および関連糖転移酵素遺伝子の発現を検討した。 1)マウス口腔粘膜より酸性糖脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーにて展開し解析した結果、主にGM3,GM1の発現が認められた。 2)GM1に特異的に結合するコレラ毒素を蛍光ラベルしたFITC-cholera toxin B subunitを用いて免疫染色を行った結果、GM1は粘膜上皮、特に基底層を中心に発現が認められ、粘膜下の結合組織にはその発現は認められなっかた。 3)GM2の合成酵素であるβ1,4GalNAc転移酵素遺伝子の発現をin situ hybridization法にて検討した結果、粘膜基底層にその発現が認められた。 口腔粘膜にはGM1が主に発現しており、これを口腔内細菌が粘膜表面への定着因子として利用している可能性が示唆されるが、現在までGM1合成酵素遺伝子のクローニングはなされておらず、その解析は困難を極める。そこでGM1合成酵素遺伝子のクローニングを行うため、GM1の前駆物質であるGM2を特異的に発現している細胞を用いた発現クローニングの実験系の確立に成功し、現在クローニングを進めている。また、各種齲蝕及び歯周病関連細菌と糖脂質との結合能を、TLCブロッティング法にて検討をおこなっている。
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