研究概要 |
最近のわが国では食物を咬まない子,噛みごたえのある食物を嫌う子などの増加が指摘され,若年者による咀嚼器官の発達の遅れを示唆している.このような食物摂取に関わる習癖は食習癖とよび,咀嚼器官の発達に悪影響を及ぼしていると考えられる.食習癖は,成長期の環境要因を背景に,哺乳から離乳へと摂食形態が変化する過程で,定着していく可能性が大きい.さらに食習癖が定着すれば,顎発育上で問題となる影響を及ぼすことが考えられる.しかし,食習癖が顎発育に及ぼす影響についてはまだ検討されていない.本研究では,食習癖の実態を明らかにし,顎発育を分析することによって,食習癖が顎発育に及ぼす影響について検討した. 対象と方法:3歳から5歳までの幼児を対象として、食習癖の調査として,食習癖に関する項目と,その背景因子に関する項目から構成されるアンケートを行った.顎顔面形態の計測として,頭部X線規格写真,咬合模型について分析した. 結果:食習癖として,食事が速いあるいは遅い,食中の水物が多い,軟らかいものを好む,偏咀嚼などが多く見られた.顎顔面形態の計測結果と分析すると,食事が速いあるいは遅く,食中の水物が多いものは,下顎骨の垂直的な発育に,偏咀嚼は下顎の対称性に関連があった. まとめ:本研究から,食習癖が,下顎骨の発育に影響を及ぼすことが示唆された.
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