研究概要 |
顎機能障害(TMD)者には,噛みしめや歯ぎしりなどの口腔習癖を持つ者が多く,咀嚼筋の緊張亢進による疲労や活動のアンバランスが関わるとされている.しかしTMDには筋障害をもつ者ともたない者があり,これらの病態と筋活動との関わりを明らかにするため,両者の生活パターンと日常的に咀嚼筋活動の特徴を比較した. 鹿児島大学歯学部の女子学生と女子職員から,筋障害のあるTMD保有者(M群),筋障害のないTMD保有者(NM群),TMDの既往のない健常者(N群)の3群各4名を選んだ.山田らの開発した携帯型筋電計を用いて,最大噛みしめ(MVCとガム咀嚼および平日24時間の咬筋活動を記録した.また,記録日を含めた5日間の生活行動を調査し,1日を食事,睡眠,勉強と仕事,その他の4つの時間帯に区分した.記録した筋活動からMVCとガム咀嚼の平均活動電位(MVC-L,GUM-L)を求めた.さらにMVC-Lを基準に5つのレベルを設定し,生活行動区分ごとに各レベルのスパイク数を3群間で比較した. 生活パターンについて,M群ではNM群とN群より食事時間が短く,食事回数は少なかった.咬筋活動について,M群ではNM群よりMVC-Lに対するGUM-Lの比率が有意に大きかった.また,食事中の時間当たりスパイク数がN群より有意に多く,強い活動が多かった.一方,NM群では勉強と仕事,その他の時間当たりスパイク数がM群より多かったが,レベル別の割合はN群と差がなかった. 以上の結果から,TMD保有者のうち,筋障害のある者では食事の時間と回数が少なく,食事中の咬筋の時間当たりスパイク数が多くて活動レベルが高く,筋障害のない者では勉強と仕事,その他の時間の時間当たりスパイク数が多い特徴があることが示唆された.
|