研究概要 |
細胞調節因子として注目されるTGF-βは、歯根膜細胞において他の結合組織系の線維芽細胞に比べてその遺伝子発現量が高いこと、また、TGF-β1により歯根膜細胞の産生するtype I collagen,fibronectin,osteonectinなどの細胞外基質蛋白質の合成が促進されるとの報告があり、TGF-βの歯周組織リモデリングへの関与が示唆されている。今回我々は、6週齢ラットより得られた歯槽骨骨芽細胞と、14歳ヒト歯根膜組織より得られた歯根膜細胞にコンピューター制御のフレクサ-セルストレインユニットを用いて18%の周期的伸展力を加え、その培養上清中に産生されるTGF-β1の活性の測定を行なった。その結果伸展力を加えた場合、骨芽細胞および歯根膜細胞の両方において産生量の増大が認められた(p<0.05,p<0.001)。しかしその産生量の増大は、骨芽細胞では約1.2倍であったのに対し歯根膜細胞では約2倍の産生量が認められ、より反応性の高いことが示唆された。一方、我々は歯根膜細胞を継代培養していくと老化した細胞の性質を持つようになることを報告しており(Goseki et al.,Mech aging Dev,1996)、in vitroで老化させたヒト歯根膜細胞と2年齢のラットから得られた歯槽骨骨芽細胞に同様な伸展力を加え、TGF-β1の産生量の測定を行なった。その結果、aging細胞の方が伸展力を加えた群、加えていない群のどちらにおいてもyoung細胞より有意に高いTGF-β1産生量を示したが、aging細胞では伸展力を加えた群と加えていない群との間でTGF-β1の産生量に有意の差は認められず、伸展力に対する反応性の低いことが示唆された。今後、各週齢のラットより歯槽骨骨芽細胞と歯根膜細胞とを得、周期的伸展力に対する応答性の違いのみならず、agingによる応答性の差についても検討を加えていく予定である。
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