研究概要 |
1.研究の目的:本研究は、大学附属病院口腔外科における手術室の気菌濃度と粉塵との関連性について分析することを目的として、気候環境、気菌濃度、粉塵の粒度別分布の測定および元素分析を行った。 2.材料および方法:本学歯学部附属病院において手術10ケースを選び(1996年7-9月)、手術室の気候環境(気温、気湿、気流、在室人員、扉開閉回数)、気菌濃度ならびに粉塵について測定を行った。気菌濃度は、SY式Pin hole samplerによる浮遊細菌濃度と落下法による落下細菌濃度の2種類で捕菌を行い、平面寒天培地(栄研:BHI-S)で培養後菌コロニー数の算出を行った。粉塵は、自動微粒子測定器(柴田科学:PARTICLE COUNTER PCK-3010A型)にて粒度別分布の測定を行い、労研TRサンプラー(柴田科学:本研究費にて購入)による集塵は、EPMA(島津EPMA-8705)による元素分析を行った。 3.結果および考察:気温は22.6〜29.5°C、気湿は30.0〜58.1%、気流は0.16〜0.46m/sec、在室人員は1.0〜17.0人、開閉扉回数は1.0〜13.0回、浮遊細菌濃度は0.02〜0.64CFU/l,落下細菌濃度は0.11〜3.06CFU、粉塵濃度(0.3μ以上)は948〜61,579 count/lであり、粒度分布の割合(0.3〜0.5:0.5〜1.0:1.0〜2.0:2.0〜5.0:5.0μ以上)は88.6:7.3:4.3:1.3:0.5であった。浮遊細菌濃度ならびに落下細菌濃度のいずれも5.0μ以上の比較的大きな粒度の粉塵と相関が高いことが認められた(r=0.581,r=0.525)。またこの粒度の粉塵因子と気候環境因子から気菌濃度に対する重回帰分析を行ったところ、浮遊細菌濃度に対しては在室人員ならびに粉塵因子、落下細菌濃度は気温、扉開閉回数ならびに粉塵因子が関連性の高いことが示された。EPMAによる粉塵の元素分析では、Si、Ba、Ca、Kが検出されたが有害な粉塵成分は確認されなかった。
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